・・・今からもう20年も前になるでしょうか。
電気カンナやノミで一躍株式市場の花形になったある電機製作所の会長にお会いして、一夕事業経営の秘訣をおうかがいしたことがあります。
彼がこの電機会社を再建のため引き受けたのは、戦後間もない混乱期で、当時、会社は愛知県の片田舎にあり、モートルの修理で細々と息をつないでいる平凡な赤字中小企業の一つでしかなかったのです。
経営立て直しに乗り込んだ後藤社長が第一に着手したのは「ためぐせ」をつけるための改革でした。
経理課長を呼んで
「この会社は金のためぐせがついていないのう。これじゃ不況風が吹くとすぐ倒産してしまう。今月から売上げの5%ずつ定期預金に回せ」
・・・と命令しました。
経理課長は
「当社は赤字で資金繰りもままならないことは社長もご存知ではありませんか。
定期預金が組める状態ではありません」
・・・と、何をいうかという口ぶりでした。